【完】君しか見えない
「……はぁー」
「ん?どうした?」
突然ルーズリーフを持った手をがくんと落とし、ため息をついた俺に黒瀬が驚く。
俺は額を抑えた。
黒瀬の声も、店内の賑やかな声も遠くなる。
「俺、バカすぎ……」
『おまえさ、ムリして俺と付き合ってんの?』
昨日、十羽に投げつけた自分の言葉が蘇る。
あいつはこんなに俺を見てくれていたのに、俺はそのことに気づかず、とんでもないこと言った。
ちゃんと見えてなかったのは、俺の方──。
「悪い、黒瀬。俺行くわ」
財布から抜き取った千円札をテーブルに置いて、テーブルを立つ。
「おう、行け行け三好っ!」
途中で席を立ったにも関わらず、返ってきたのは嬉しそうな声だった。