【完】君しか見えない
ウェイトレスとぶつかりそうになりながらも、ファミレスを駆け出る。
あいつがどこにいるか、わかんねぇ。
だけど今すぐ、会いたくて。
すっかり暗くなった街中を駆ける。
知り合いにすれ違って何度か声を掛けられたけど、立ち止まっていられなかった。
無意識のうちに足が向かっていたのは、いつも待ち合わせをしているバス待合所だった。
バス待合所の数メートル近くまで来た俺は、走っていた足を止めた。
「どうしてここにいるんだよ」
……なぜなら、待合所の前に立つ十羽の姿を見つけたから。
こちらに背を向けるようにして空を見上げていた十羽は、声が届いたのかこちらを振り返り、消えそうな微笑みをそっと浮かべた。
「ここにいたら、楓くんに会えると思って」