【完】君しか見えない
私は楓くんに笑顔を向け、得意げに言った。
「私だって、だてに幼なじみやってないからね」
だから、自分を否定するようなことばかり言わないでほしい。
楓くんが言葉を失ったかのように私を見つめる。
と、そこで私はあることを思い出し、声をあげた。
「あっ、そうだ!
今日は楓くんと行きたいところがあるんだった!」
「行きたいとこ?」
「うん、私たちの中学校!」
私の提案に、はぁ?と呆れかえる楓くん。
「やだよ、めんどくせー」
「そこをなんとか……!
お願いっ、この通り!」
顔の前で手を合わせ、懇願する。
「……ね?」
チラリと目を開け、楓くんを見上げる。
すると、楓くんが目を細め、こちらをじと目で睨んだ。
「あー、まじで腹立つ。
こっち見んな、ばか十羽」
なぜか暴言つきで。