【完】君しか見えない
徐々に、黒瀬くんの顔に混乱の色が広がっていく。
次に黒瀬くんが言うはずの言葉は、容易に想像できてしまった。
……お願い、その先を言わないで。
だけどそんな願いも虚しく、黒瀬くんは困惑したように口を開いた。
「なに言ってんだよ、三好。
おまえ以外、だれもいねぇじゃん……」
「……え?」
隣にいるはずなのに、楓くんの声がどこか遠くで聞こえる。
私はうつむき、ぎゅっと下唇をかみしめた。
──こうなる前に、早く楓くんに言っておけばよかった。
私、もう死んでるんだって。
だから今の私の姿は、〝君しか見えない〟って。