【完】君しか見えない
1週間ほどぶりに訪れたタンポポ畑は、十羽と初めて来たあの日となにも変わってはいなかった。
ただ、森の中にあることと日が陰ってきたのが相まって、あたりは暗くなり始めていた。
十羽がタンポポが咲いてるあたりに駆け寄り、しゃがみこむ。
「タンポポ、相変わらず綺麗に咲いてる。
こんなに寒いのにすごいねぇ、君たち」
わざとその場の雰囲気を明るくするように振る舞う十羽を、俺は少し語気を強めて呼んだ。
「十羽」
訳がわからなかった。
一刻も早く、このもやもやした状況から抜け出したかった。
十羽がこちらに背を向けたまま、俺の呼びかに静かに答える。
だけどそれは、さらに俺の混乱を深めるものだった。
「今日はね、最後のデートをしに来たの」
「……は?」