【完】君しか見えない
あれは、桜が満開に咲き誇る、ある日のこと。
『なぁ、おまえさぁ、ちょっと生意気なんじゃないの?』
『え、あの』
『目が合ったと思ったら睨んできて、喧嘩売ってんのか?』
『ち、違う……!』
入学早々、私は校舎裏で隣のクラスの男子に絡まれていた。
昼休みになり校舎裏の桜を見に来たところ、この見るからに柄の悪い男子とたまたま鉢合わせてしまったのが運の尽きだった。
私の暗いと言われる目が、この人には睨んでるように思えていたらしく、廊下ですれ違う度に溜まっていたその鬱憤が爆発したのだ。
壁際に追い込まれ、ぐっと顔を近づけられる。
ギラギラとした目が、挑発的に私を見下ろしてくる。
近くで凄まれると、逃げるという選択肢すら頭から無くなって。
誤解をされてこんな目に遭うなんて、泣きたくなる。