【完】君しか見えない
隣であーだこーだ言ってる楓くんは無視して、鉄の柵に足をかける。
そしててっぺんまで上り、柵に腰かけたのはいいものの。
「た、高い……」
降りる方法は盲点だった。
2メートル下の地面を目の当たりにすると、一気に恐怖心が襲ってくる。
「どうしよう〜楓くん……」
助けを求めるように涙目で振り返れば、私の様子を傍観していた楓くんが呆れたようにため息をついた。
「ったく、しょうがねぇな……。
まじで世話やける」
重い腰を上げたかと思うと、柵に足をかけ、軽い身のこなしで飛び越えた楓くん。
それは、あっという間の出来事。
すごすぎる!やっぱり運動神経抜群!
なんて、ひとりで盛り上がっていると。
「ほら」
楓くんがこちらを見上げ、私に向かって両手を広げた。
「え……?」
「降りられないんだろ。
受け止めてやるから」
「楓くん……」