【完】君しか見えない


千隼くんの中学に着いた頃には、早朝に出発したというのに、もう夕方になっていた。



中学校を調べた時も思ったけど、実際に来てみると、さらに遠さを痛感する。



こんな遠いとこに住んでたんだな……。



千隼くんが通っていると思われる中学校は、駅から徒歩数分のところにあった。



学校に入って行くわけにもいかず、校門の前で千隼くんが出てくるのを待つ。



やがて授業終了らしきチャイムが鳴り、多くの中学生が校門から出てきた。



千隼くんが今日部活やってたら、この時間には出てこねぇよな……。



でも端から、何時までだって待つつもりでここに来た。



と、その時。



見覚えのある、さらさらなマッシュルームカットの丸い頭が見えた。



「……千隼くん!」



俺の呼びかけに、彼がこちらを振り返った。



「なんであんたがここに……」



やっぱりビンゴ、千隼くんだ。



2年前と変わっていないその姿を見て、なぜか安堵を覚える。



多分、この世界に取り残された、そんな気分だったから。

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