【完】君しか見えない


数分ほどかかって到着したのは、人気のない公園まで来た時だった。



公園の中央付近で千隼くんは唐突に足を止め、こちらを振り返る。



「それでさっきの続きだけど、十羽はいつ楓に会いに行ったの?」



「それは……」



『楓くん!』

ふと再会した日のことが蘇り、胸の痛みを感じながらも俺は答えた。



「先月の25日、クリスマスだよ」



するとなぜか額を抑えて、ため息をつく千隼くん。



「……ありえないことだけど、楓の話信じるよ。
で、十羽のなにを知りたいの?」



なんで日付を言っただけで、態度が一変して信じてもらえたかはわからないけど、そんなことをいちいち気にしてる暇なんてなかった。



「あいつが死んだ時のこと。
それから」



言いかけて、その声は千隼くんの声にかき消されていた。



「死んだって、十羽が言ったの?」



「ああ、そうだけど……」



すると千隼くんが淡々と、でもたしかな芯を持った声で言った。



「違う、十羽は死んでないよ」

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