【完】君しか見えない


状況がわからず混乱する俺に、千隼くんが静かに答えを放つ。



「楓のために」



「え?」



思わぬ答えに、固まる。



どういうことだよ……。



千隼くんが、俺のことをまっすぐに見すえた。



「十羽は、交通事故に遭ったんだ。
早朝に横断歩道を渡ろうとしたところで、飲酒運転の車に突っ込まれて。
事故に遭ったのは、クリスマスイブの日」



「……っ」



一瞬にして心が凍りつくのを感じた。



心臓が嫌な感じに脈を打つ。



答えが、真実が、見つかってしまった。

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