【完】君しか見えない


クリスマスイブ。


それは、俺にとって因縁の日───母さんがいなくなった日。



引っ越すまでは、十羽が必ず一緒にいてくれた日。



『おばさんの代わりに私が楓くんの隣にいるって、そう約束したのに。
隣にいられなくてごめんね』


『かえでちゃん、とわがずっと一緒にいてあげる』



十羽の声が、頭の中で再生される。



うそ、だろ……。



俺が辿り着いた真実を答え合わせするように、千隼くんが口を開いた。



「十羽は、楓に会いに行く途中で事故に遭って、意識不明になったんだ」



目の前が、フラッシュを焚いたかのように真っ白になる。



なにもかも、俺のせい──。



「十羽のことだから、楓が自分を責めないように事故のことを隠したんだよ。
死んでるって言ったのも、病院に来られたりしたら事故に遭ったことが楓にバレると思ったからだと思う」



「十、羽……」

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