【完】君しか見えない


「だとしても死んだって言い切ったってことは、体の状態が良くないのをわかってるかもしれない。
予断を許さない状況が続いてるし……」



ぽつりと呟かれた言葉に、思わず目を見開く。



たしかに、回復する見込みがあるとしたら、死んだなんて言うか……?



俺は考えるよりも先に、バッと頭を下げていた。



「なっ、なにしてんのっ?」



頭上で、千隼くんがたじろいだのがわかった。



「頼む、十羽のところへ連れて行ってほしい」



「……っ」



「あいつに言ったんだ、幸せにするって」



「楓に十羽のことが幸せにできるの?
そんなチャラチャラして、好きな女がいじめられてることにも気づかないで」



「中学の頃は守ってやれなかった。
でももう違う。
なにに変えても、あいつのことを守ってやりたい」



「……」

< 311 / 360 >

この作品をシェア

pagetop