【完】君しか見えない
「だとしても死んだって言い切ったってことは、体の状態が良くないのをわかってるかもしれない。
予断を許さない状況が続いてるし……」
ぽつりと呟かれた言葉に、思わず目を見開く。
たしかに、回復する見込みがあるとしたら、死んだなんて言うか……?
俺は考えるよりも先に、バッと頭を下げていた。
「なっ、なにしてんのっ?」
頭上で、千隼くんがたじろいだのがわかった。
「頼む、十羽のところへ連れて行ってほしい」
「……っ」
「あいつに言ったんだ、幸せにするって」
「楓に十羽のことが幸せにできるの?
そんなチャラチャラして、好きな女がいじめられてることにも気づかないで」
「中学の頃は守ってやれなかった。
でももう違う。
なにに変えても、あいつのことを守ってやりたい」
「……」