【完】君しか見えない
嵐が過ぎ去ったかのように、シンとする病室。
「おまえの弟、おもしれぇな。
相変わらず、全然姉弟似てねーけど」
苦笑しながら、十羽の方に体を向ける。
睫毛が、白い肌に細く長い影を落としている。
あーあ。
今にも瞼が開いて、にこっと笑いそうなのにな。
「……なぁ、十羽。
あの日会いに来てくれて、ありがとな」
十羽が来てくれなかったら、多分俺は一生おまえに会えなかった。
あの日おまえが会いに来てくれたように、今度は俺が会いに来るから。
何度だって、おまえが返事をしてくれる日まで。
俺ん家から十羽の病院を往復する毎日を、千隼くんも十羽の両親も心配してくれる。
だけどこんな距離、全然苦じゃない。