【完】君しか見えない
どれくらい眠っていたのだろうか。
不意にだれかに名前を呼ばれた気がして、頭が覚醒した。
「ん……」
その感覚を頼りに、重い瞼をわずかに開ける。
そして上体を起こした直後、目の前の光景を映した俺の目は大きく見開かれていた。
「……っ」
「楓、くん」
耳にたしかに届く、愛しい声。
気づいた時にはもう、涙がはらはらこぼれて、頬を伝っていた。
だけど、一気に感情が胸の奥から込み上げてきて、自分が泣いてることなんか気づかなかった。
夢の続きかと疑ったけど、違う、これは夢じゃない。
窓の外では、いつの間にかしんしんと雪が降っている。
俺は顔をくしゃっとほころばせて言った。
「待ちくたびれたよ、ばか」
fin ・+˚