【完】君しか見えない
◇ 番外編 ◇
L もうひとつの物語《前編》
「私、楓くんに会いに行く」
「はぁ?」
宣言した直後、すごいスピードで弟が批難の声をあげた。
寒さが増してきた、12月のとある休日の昼間。
両親が仲良くショッピングに行ってしまい、家には私と千隼だけ。
テレビを見ていた千隼は、突然リビングを訪れそう宣言した私に、不快感むき出しの目を向けた。
「なに言ってんの、十羽。
今更なんであんな奴に会いに行くわけ?」
千隼は、私の幼なじみである楓くんをなぜか嫌っている。
今回も反対されるってことはわかってた。
だけど、その上で決心は固まっていた。
「もうすぐクリスマスイブでしょ?
去年会いに行けなかったから、今年こそは楓くんに会いに行くって決めたの」