【完】君しか見えない
クッションを抱えながら、千隼がじろりと私を見上げる。
「あのねぇ。僕だって釘刺すようなことばっかり言いたくないけど、あいつ最低だよ。
この前だって言ったよね。
すっかり変わったあいつの姿見たって」
「それはそうだけど……」
この前、千隼が引っ越す前の同級生の元へ遊びに行った時、たまたま楓くんの姿を見たと言うのだ。
髪も染めて、ピアスも開けて、制服も着崩して。
おまけに数人の女の子と、いちゃいちゃしながら歩いていたらしい。
千隼の証言の楓くんは、あまりにも私の記憶の中の楓くんとかけ離れていて、想像もできない。
だから、この目で見なければ信じられなかった。
たまたま女子に囲まれちゃっただけかもしれないし。
だって楓くん、かっこいいもん。