【完】君しか見えない
そして、翌日。
私は高校から楓くんの家の途中にあるバス停で、楓くんを待った。
街へ繋がる道はひとつしかないから、必ずここを通ることはわかっていた。
今度は、生霊として楓くんに会いにきた。
さよならを、言うために。
数十分ほど待った頃、楓くんが姿を現した。
耳にイヤホンを挿し、スマホをいじりながらこちらへ歩いてくる楓くん。
その視線はスマホに注がれたまま、私の横を通り過ぎる。
……やっぱり、気づいてもらえなかったか。