【完】君しか見えない
昨日はたしかに目が合ったけど、それは勘違いだったのだ。
残念な感情を抱き、うつむいた、その時だった。
「……十羽?」
突然腕を掴まれた。
そして、私の名前を呼ぶ、あの声。
思わず泣きそうになる。
目の奥がジリジリ痛んで、視界がぼやけて。
でもそれをぐっと抑えて、振り返った。
そこには、楓くんがいた。
私の腕を掴んで、驚いたように少し目を見開いた楓くんが。
私は再び、君の瞳に映ることができた。