【完】君しか見えない
でもすぐに、私に告白を受ける資格なんてないと思い直す。
だって私は生霊。
会いに来たのは、あの日言えなかったさよならを言うためなのだ。
楓くんには普通の彼女を作って、だれより幸せな人生を歩んでほしい。
楓くんにふさわしいのは、私じゃない。
「でも、楓くんには私なんかよりいい子が……」
そう言いかけた時、楓くんの手が私の頬を両手で包み込んで、上を向けさせられる。
視界いっぱいに映った楓くんは、眉尻を下げて泣きそうに笑っていた。
「十羽は、嘘が下手だな」
「……っ」
言われて初めて気づく。
いつの間にか泣いていたことに。