【完】君しか見えない
欲張りになってしまった。
短い時間しか残されていないのに、楓くんにもっと近づきたいと思ってしまった。
本当は、本当の本当は、楓くんの隣にいる女の子のことを想像するだけで、胸が張り裂けそうだった。
「ごめん……好き……。
私も、楓くんのことが好き……」
紛れもなく、それが本心だった。
雨のように本音がこぼれれば、楓くんの大きな腕に包み込まれる。
あまりの温かさに、目を閉じると涙が睫毛に滲んで頬を伝った。
ごめんね楓くん。
やっぱりどうしようもなく君が好きで、この気持ちに嘘をつくことができない。
少しだけ、この腕の中で甘えさせてください──。