【完】君しか見えない


欲張りになってしまった。



短い時間しか残されていないのに、楓くんにもっと近づきたいと思ってしまった。



本当は、本当の本当は、楓くんの隣にいる女の子のことを想像するだけで、胸が張り裂けそうだった。



「ごめん……好き……。
私も、楓くんのことが好き……」



紛れもなく、それが本心だった。



雨のように本音がこぼれれば、楓くんの大きな腕に包み込まれる。



あまりの温かさに、目を閉じると涙が睫毛に滲んで頬を伝った。



ごめんね楓くん。


やっぱりどうしようもなく君が好きで、この気持ちに嘘をつくことができない。



少しだけ、この腕の中で甘えさせてください──。





< 345 / 360 >

この作品をシェア

pagetop