【完】君しか見えない
『お高くとまってんなよ』
『や、やめて……』
恐怖にぎゅっと目を瞑り、振り絞るように抵抗の声をあげた、その時だった。
『俺の幼なじみになにしてんの』
突然聞こえてきた声の方に視線を向ければ、男子の肩越しに楓くんの姿が見えた。
『楓くんっ……』
『げっ、三好……』
楓くんの綺麗な顔からは、満ち満ちた怒りの色が見て取れた。
一瞬たりとも怯むことなくこちらへ歩いてきた楓くんは、男子の腕を掴んで、ぐっと捻りあげる。
『いっ、いでで!』
男子の目をまっすぐに睨みつけたまま、楓くんが言葉を放つ。
『汚い手で十羽に触んな。
十羽のことを傷つけるようなことをしたら、俺が許さないから』
『痛っ、わかった、わかったから離せって!』
さっきまで威勢の良かった男子は、楓くんには敵わないと思ったのか、腕を解かれると尻尾を巻いて逃げて行った。