【完】君しか見えない
それにしても、楓くんすごい。
助っ人なんて。
楓くん運動神経いいから、中学でもいろんな部活から勧誘受けてたもんね。
でも、楓くんはなぜかすべての勧誘を断っていた。
なんで部活に所属しないのか、私には不思議でしょうがなかった。
楓くんが部活に入ったら、どんな部活でも即レギュラーになれるくらいの戦力だ。
どうしてって中学のころ訊いたら、
『俺には、部活より大切なことがあるから』
なんて、とびきりの笑顔ではぐらかされちゃったけど。
とはいえ、楓くんがスポーツを楽しむ環境があるのなら、それは私にとっても嬉しいことだ。
「試合、頑張ってきてね!」
「まー練習試合だから、そんな大層なものじゃねぇけどな。
地元の総合体育館でやる、規模のちっちゃい試合だし」
「へぇ〜」
うんうんと頷き耳を傾けながらも、私の意識は違う方へ向いていた。
頭の中に駆け巡るのは、楓くんが華麗にゴールを決める姿。
バスケをする楓くんは、さぞかしかっこいいんだろうなぁ……。