【完】君しか見えない
「みなさーん!
応援ありがとうございましたーっ!
午後の応援もお願いしまぁーっす!」
コートの真ん中で、2階の応援席に向かってぶんぶんと両手を振っている、キャプテンの黒瀬くん。
「黒瀬くんかわいー!」
黒瀬くんはそのルックスと愛嬌から人気があり、みんな黒瀬くんに手を振り返している。
変わらないなぁ、黒瀬くん。
話した機会はほとんどなかったけど、楓くんの親友ということから勝手に親近感を抱いていた私は、懐かしい気持ちで口元を緩ませながら彼を見つめる。
と、その時。
前触れも無く、突然横からぐっと右手首を掴まれた。
反射的にそちらに顔を向ければ、タオルを頭から被ったユニフォーム姿の人が立っていて。
「……楓、くん……?」
タオルで顔を隠しているようだけど、私にはすぐわかった。