【完】君しか見えない
「ごめんね、勝手に来て。
バスケをしてる楓くんが見たくて……」
「迷惑なんだよ、来られると」
楓くんがこちらを振り返る。
その反動でタオルがパサッと肩に落ち、露わになったその瞳は、怒りに満ち満ちていた。
そんな表情を見たことがなかった私は、思わず目を瞠る。
「楓く、」
「いいから人が来る前に早く帰れ」
「……っ」
「じゃあな」
吐き出すようにそれだけ言うと、私の手首から左手が離れる。
だけど、思わずその手首を掴んでいた。
「楓くん……っ」