【完】君しか見えない
そうこうしてるうちに包帯を巻き終え、端を縛り、
「……よし、できた!」
「うん、壊滅的に下手くそ」
「ご、ごめん」
楓くんの間髪入れないツッコミは、ごもっとも。
私が巻いた包帯は、悲惨なほどにぐちゃぐちゃだ。
「巻くだけなのに、どうしたらこんなんなるんだよ。
不器用なとこ、ちっとも成長してねぇな」
「うっ……。
待って、今からやり直すから!」
再び楓くんの手を取り、巻き直そうとして、でもそれは楓くんの声によって制された。
「いーよ、これで」
「でも」
「昼休憩で人来るし」
「そっか……」
楓くんの手首から、静かに手を離す。
楓くんがそう言うなら、早く帰らないと。
これ以上楓くんに迷惑をかけられない。