【完】君しか見えない
「今日は突然押しかけちゃってごめんね。
でも、楓くんのバスケしてる姿見られて幸せだった。
明日も、会える……?」
おずおずとそう尋ねると、楓くんはぐちゃぐちゃな包帯に視線を落としたままつぶやいた。
「委員会あるし、寄る」
素っ気なく発せられたその言葉に、心からの安堵を覚える。
良かった、明日も会える。
「じゃあ待ってるね、あのバス停で。
また、明日」
小さく手を振り、床に置いていたバックを肩にかけてその場を去ろうと踵を返した、その時。
「……十羽」
呼び止めるかのように、名前を呼ばれた。
「ん?どうしたの、楓くん」
首を傾げ尋ねると、楓くんは唇を開きかけ、でも躊躇うかのようにそれを閉じた。
やがてまた口を開く。
「……やっぱ、なんでもない。
じゃあな」
そう告げつつもなにか言いたげな瞳に心が揺れたその時、女の子達がぞろぞろと扉を開けて出て来た。