【完】君しか見えない
「あっ、楓くんいたー!」
女の子達はどうやら楓くんを探していたらしく、私が駆け足で体育館の外へ出たのとほぼ同時に、楓くんは女子たちに囲まれた。
「どこいたのー?
探したんだよー!」
「あはは、ごめんね、ちょっと用があって」
「ってあれ?その手どうしたのっ?
包帯ぐちゃぐちゃじゃない!
私がやり直してあげる!」
「あー、ありがと。
でも大丈夫。これがいいんだよね」
彼が、女の子たちに向けた笑みを口元に残したまま、寂しげな瞳で包帯に視線を落としていたことを、私は知らない。
私たちはやっぱり不器用で
もがけばもがくほど、君を傷つけた。