【完】もう一度、キミのとなりで。

「……あの、矢吹くん」


「ん?」


「ここ、顔に絵の具ついてるよ」


「え?」


言われて頬を触る彼。だけど、場所が合ってない。


「えっとね、もっとこっち」


「は?どこだよ?」


だからじれったくなった私は一歩歩み寄って、手を伸ばして彼の左頬にそっと触れてみた。


「あの、ここ……」


「……っ!」


するとなぜか、ピクッと反応する彼。


あれ?触ったのはまずかったかな?


驚いたように目を見開いて私を見下ろす彼と一瞬目が合う。


だけど、なぜかその顔は真っ赤だった。


えっ……?


「あ、ごめ……」


「いや、どうも。洗ってくるわ」


それだけ告げると焦ったようにクルッと背を向けて、教室を出ていく矢吹くん。


意外すぎる彼の反応に、ポカンとしてしまう。


……なんだったんだろう、今の。


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