【完】もう一度、キミのとなりで。

「柏木さんは真面目に歌ってた。

それより、口パクしてる奴が恥ずかしがらずにちゃんと歌ったほうがいいと思う。

俺から見ると、わかるよ」


その言葉に再びざわつくクラスメイト達。


「おいー、口パクしてる奴って誰だよ~」


「ウソ……。碧空くんが怒ったぁ」


いつもニコニコしてて温厚な碧空くんが、珍しく厳しい口調でそんなふうに言うものだから、みんなとても驚いていた。


私は驚きと感激のあまり、そのまま目を見開いて固まる。


あの人気者の碧空くんが、ほとんど話したこともない私なんかのことをかばってくれたという事実が信じられなくて。


だけど嬉しくて、今度は別の意味で泣きそうになった。


碓井さんたちも、碧空くんに言われたとたん、急にバツが悪そうな顔をして、黙ったまま下を向く。


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