【完】もう一度、キミのとなりで。

練習が終わったあと、クラスメイトの大半が居なくなった教室で、私は碧空くんのことを呼びとめた。


どうしても、さっきのお礼が言いたくて。


話しかけるのはとても勇気がいったけれど、そのまま何も言わずに帰るなんてとてもできなかった。


だって彼はまるで、突然現れた救世主のようだったから。


「あの、ひ、柊木くんっ……!」


「おう柏木、おつかれ。

どうしたの?」


「あ、あの……あのね、えっと……」


だけど、いざ彼を前にすると緊張しすぎて、やっぱりすぐには言葉が出てこない。


モゴモゴしながらうつむいていたら、どんどん頭が真っ白になってきて、しまいには何を話していいかわからなくなってしまった。


ただ、ありがとうって言いたかっただけなのに……。


どうしていざとなると言葉が出てこないんだろう。


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