円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
足音がして、ドアの鍵が開く音がした。

メアリーの心臓は高鳴る。

これ以上ないというほどの、
不機嫌な従兄の顔も気になった。

けれど、メアリーには、
こんなに素敵な部屋なのに、
ベッドが天蓋付ではないことに
がっかりした。


「ダメじゃないの、これじゃあ」

ウィリアムは、
何か言うどころじゃなかったし、
アリスは、エリノアのことが
気になっていたから、
メアリーの嘆きはルーカスだけに
届いていた。

ルーカスは、何か不思議なものを
見つめるようにメアリーを見た。


主人の顔つきを見れば、
話し合いが上手くいかなかったのだろう
と彼は察知した。

だから内心、
メアリーの不可解な言葉の意味を
知りたくて、
うずうずしていたのだけれど、
無駄なことを言わないように
じっとこらえていた。



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