円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
しばらくして、
アリスがエリノアを連れて行った。
エリノアがいなくなった後、
ルーカスは、主人の前に思い切って
出て行った。
食事の前に少し、
外に出ませんかと主人を誘ったのだ。
ウィリアムは、黙って頷くと
連れ立って屋敷の外に出た。
彼らは、屋敷の庭に出た。
屋敷の敷地内の池まで来た時に、
ウィリアムが言う。
「お前は、僕のことを非難してるのか?」
ルーカスは、
わざと大袈裟に微笑んでいった。
「いいえ、旦那様らしくなくて
微笑ましく思っております」
「微笑ましいだと?
ずいぶん見下されたものだな」
「いいえ。ウィリアム様の場合は
欠点にはなりませんよ。
なにしろ、戦いの場においては、
勇敢な将軍であられる方が、
一人の女性の前では、
なすすべもない……
申し訳ございません。言い過ぎました」
ウィリアムは、深くため息をついた。
「ルーカス、
あれをどうしたらいいと思う?
やっぱり、無理やり言うことを
聞かせて連れてくるのは無理そうだ。
何とか、
彼女に分からせる方法はないか?」
「戦いと同じでございます。
奇策で上手くいかないと思われたら、
正攻法がよろしいのではないですか?」
「お前、人ごとだと思って」
「エリノア様は戸惑って
いらっしゃいます。
優しくして差し上げてください」
「わかっている。
あいつが大人しくしてたらな」
「旦那様……」