円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「それより、お前、
エリノアの侍女をどう思う?」
思わぬ方向に矛先が向いて、
ルーカスは戸惑った。
「ええっ?」
「なに、うろたえている。
アリスと言うんだろう?」
「はい。アリスがどうかしましたか?」
「どう思う?なかなかいい娘ではないか。
お前、同郷でよく知ってるだろう?
なかなか機転が利いていい女だな。
手元に置いてみるか」
「はい」
ルーカスが、
真剣な表情で主人の顔を見る。
ウィリアムが笑った。
「バカ、ただ聞いただけだ。
やられっぱなしじゃ、
癪に障るだけだからな」
「からかうのは、おやめください」
「あの、アリスという侍女も、
エリノアと一緒に連れて来てやろうか?」
「滅相もございません」
「なんだ、お前、彼女に何も言って
ないのか?
それなのに、何、すましてるんだ?
なあんだ。お前だって何にもできない
じゃないか。意気地なし」
「旦那様、どうしてそれを……」
「とっくに気が付いてるさ。
お前は、アリスの前だと
いつもと違うからな。
こう、目が泳いどるぞ」
「そんなはず、ありません」