円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
メアリーの部屋では、
二人がかりでエリノアの舞踏会用の
ドレスの着替えを手伝っていた。
「ねえ、アリスもういいわ。
止めて、苦しくて死にそう」
エリノアは、コルセットでウェストを
締め上げられ、息も絶え絶えに言う。
「ダメです。ウィリアム様から、
きつくするように言い使ってますから」
アリスが手を緩めずに言う。
「本当よ、エリノア。
その方がずっとスタイルがよく見えるわ」
メアリーはエリノアの手を持って、
支えになっている。
「本当に、こんなに苦しい
思いをした分、
ちゃんと見返りはあるの?」
「もちろんよ。エリノア。
今日はピカピカに磨き上げて、
たくさんの殿方を魅了しましょう」
メアリーが呑気に言う。
「イヤよ。そんなの。全然興味ないわ」
「エリノア、今日こそは、
親戚筋のおじさまばかり狙って、
楽にステップを踏んで、
どこかにいなくなるなんて絶対ダメよ」
「いやだ、そんなとこまで見てたの?」
「だって、いつも愚痴を言われるのよ。
あなたに踊りを申し込もうとしたけど、
君の妹は、血縁関係じゃないと
踊らないのかいって、
若い男性に何度も言われたわ」
「いっそのこと、
カードにそう書いておこうかしら」
エリノアが息を整えて言う。
「それでも、ウィリアムが踊りを
申し込んで来たら、逆らえないわよ」
「彼の体が埋まるまで、親戚筋の予約を
取り付けておくから大丈夫よ」