円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
伯爵家は、おおよそ百年ほど前に
建てられた。
屋敷の外観は、真っ白で森の中に
降り立った、優美な白い鳥のような
印象を持つ。
それに対して、建物の中内装に、
オーク材がたくさん使われているため、
室内は落ち着いた感じがする。
壁一面のオーク材に負けないように、
家具もきっちりと手入れがされている。
使用人たちが、入念にワックスを
がけて、黒光りするまで磨きあげるのだ。
重厚なベルベットを使った
ソファやクッション、
ブロンズ製の燭台、
天蓋付きのベッドにいたるまで、
伝統と格式を印象をイメージするよう
計算されている。
どの部屋にも不自然じゃない、
ずっしりとした高価な敷物。
当時の建物らしく、
共通して1階にホールと食堂があり、
2階にロングギャラリーが設けられ、
壁にはびっしり蔵書が並べられている。
さっきまでいた、無味乾燥で粗雑な
使用人の世界と比べると、ここはまったく、別の世界のような気がした。