円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

舞踏会が開かれている、
伯爵家のこのお屋敷にも、
たくさんの人が働いている。

確かに同じ屋敷にいるはずなのに、
二重の壁に阻まれて、まったく
使用人たちの存在を意識することがない。

階上の世界にいるときは、
そのことに意識がいかなかった。

食事だって、考えてみれば、
自然に出来上がるわけではないし、
お湯だってひとりでに
沸くわけではない。

手元にあるベル1つ鳴らせば、
直ちに使用人がやって来て、
自分の代わりに用を済ませてくれる。

今まで、それが当たり前だと思ってきた。

それにしても、自分は何も
できないんだとエリノアは思った。


そういう誰かに、
かしずかれる生活も、ひょっとしたら終わりを告げるかも知れない。

父が亡くなり、ウィリアムが
土地と屋敷を相続すれば、
彼の考え1つで、
エリノア達姉妹を追い出せるのだ。

このことを忘れてはならない。

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