円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
ウィリアムとは、ほとんど
会話を交わさないで踊った。
二人とも、幼いころから、
ダンスについては訓練されている。
お互いの心がどんな状態であろうと、
息も乱れず、見事に踊ることが出来る。
彼らは、余計なことはしゃべらず、
無表情のまま踊り切り、お礼を述べてそのまま別れた。
ウィリアムには、
次に踊る女性が待っていて、
エリノアはそっちの方へ歩いて行く
ウィリアムを見送った。
「ウィリアム様」
甘ったるい声の女性が、
ウィリアムに近づいてきた。
馬車を降りるときに見た、
リディアという女性だ。
確かにきれいな人だった。
豪華なドレスに身を包み、
ウィリアムに必要以上にべったりしてる。
彼女の猫なで声も、大きすぎる声も
エリノアにはどうでもいいと思えた。
彼女は、踊りの約束を済ませ
義務を果たした。
上の階に行って、ロングギャラリー
にある、伯爵家の蔵書を見てこようと思ってそっちに行きかけた。