円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


ベッドに入っても、
エリノアは眠れなかった。

ホールにいた時、
トーマスが言ってたことを思い出した。


『何なら、そのまま一緒に住めばいい』

トーマスは、確かにそう言っていた。

『住めばいい……』ってどこに?

彼の屋敷に?

多分、だだっ広いんだろうから、
一人くらい紛れ込んでも分からないだろうけど。

あれは、どういう意味だったんだろう。

アメリカが気に入れば、そのまま
一緒に住めばいいってことだろうか。

やっぱり、彼の屋敷に?


トーマスと一緒にアメリカに行く。

アメリカには行ってみたい。

トーマスと一緒じゃなくても
行ってみたい。


どんなに素晴らしい土地でも、
そこに住むなんて考えたことはない。

プルームズベリーを離れて、
別の場所に住むなんて、エリノアには想像もできない。

彼女は、とうとう
体を起こしてベッドの上に座った。

部屋の空気は、すっかり冷えていた。


エリノアは、
窓の外の景色を見ようと立ち上がった。

しんとした空間に、衣擦れの音と、
話声が微かに聞こえた。

それから、
廊下から足音が近づいてくるのが分かった。

それから、せき込んで、
むせるような音。

誰か外にいるのかな。

耳を澄ませていると、
人が話す声が大きく聞こえた。。
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