円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリノアは、
窓の外を見るのを諦めドアの方に歩いた。

ドアがバタンと閉まる音がして、
話声もさらに、近づいてくる。


「……どうしたらよろしいんですか?」
声をひそめようとしても、
女性の声がだんだん大きくなる。

「いっそのこと……」
女性の方からは、
そんな声が断片的に聞こえてくる。



二人の声が遠ざかるのを待って、
ドアを少し開けてみた。

「大丈夫だから……」
エリノアが言われたわけじゃないのに。
ピクンと反応した。

男の方がそう言って、女性をなだめている。


誰かが廊下で話をしているだけだ。
そのまま寝ようと思っていたら、
女性の声が聞こえた。

「トーマスさん、お願い。
あの方とは何でもないって言って」

あの方?

トーマスさん?

エリノアは、二人が
通り過ぎるのを待って、ドアをゆっくりあけた。

男女が、廊下の端の使用人用の階段を
下りてゆくのが見えた。
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