円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

エリノアは、
ルーカスの固い胸に顔を押し付けられていた。

彼の顎が頭に触れている。

ルーカスは、
エリノアが逃げ出さないと分かると、腕の力を緩めた。

「もう少し我慢してください」
と平然と言う。

エリノアは、気が気ではなかった。

彼に抱かれて、体温が急上昇している。

力強く逞しい腕に引き寄せられて、
心臓が破裂しそうになるほどドキドキしていた。

こんなに激しく心臓が動いていたら、
ルーカスに気付かれるんじゃないだろうか?

エリノアは、
彼から離れようと腕を突っ張った。

「ダメですよ。
もう少しこのままでいて下さい」

優しく頭を抱かれ、
こめかみのあたりに、
唇でキスされるようにささやかれた。

エリノアは、彼の腕の中で、
男らしい端正な顔を見上げた。

メイドたちが、
ルーカスに話しかけられただけで、
ぽおっと赤くなるのが分かった。

貴婦人の誰もが、
彼に給仕してもらいたがるのがよくわかった。

身分違いでなかったら、
危なかったかもしれない。

こんなふうにされたら、
他のことなんか考えられなくなってしまう。
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