円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「ねえ、ルーカス」


「何でしょう?エリノア様」
エリノアが少しはにかんで言う。


「男性は……好きな女性には、
あんなふうにするものなの?」

「エリノア様?」
彼は、ぐっとこらえて
彼女のペースに任せた。


「いいわ、忘れて。
恥ずかしいから聞かなかったことにして」
エリノアが両手で顔を覆って言う。

「時と場合によりますよ。エリノア様。
もちろん、男性は、
好きな女性に対して、
気持ちが強いほどそうしたいと思うものです。

でも、同時にとても
大切にしたいと思うものなのです」


「でも、ルーカス、ウィリアムは、
とっても怖い顔していたわ。
私、いけない子だって、叱られたわ」


「すべては、エリノア様を
心配されてのことですよ。
お嬢様が、レディの姿ではなく、
使用人の制服を着ていたら、
ご自分の身は、すべてご自分で守らねばなりませんから」

「でも……」

「お嬢様、まだお分かりになりませんか?
こんな夜遅くに、
男を部屋に招き入れるなんてこと、もうおやめください」

「ルーカス?」

「あなたが、レディでなければ、
トーマス様がメイドにしていたことを、
今、あなたにしても、罪にはならないってことが分かりますか?

上級使用人や地位の高い男性が、
一時的な恋の戯れの相手として、
メイドを見ているのをご存知ですか?」
< 149 / 195 >

この作品をシェア

pagetop