円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「ねえ、ルーカス」
「何でしょう?エリノア様」
エリノアが少しはにかんで言う。
「男性は……好きな女性には、
あんなふうにするものなの?」
「エリノア様?」
彼は、ぐっとこらえて
彼女のペースに任せた。
「いいわ、忘れて。
恥ずかしいから聞かなかったことにして」
エリノアが両手で顔を覆って言う。
「時と場合によりますよ。エリノア様。
もちろん、男性は、
好きな女性に対して、
気持ちが強いほどそうしたいと思うものです。
でも、同時にとても
大切にしたいと思うものなのです」
「でも、ルーカス、ウィリアムは、
とっても怖い顔していたわ。
私、いけない子だって、叱られたわ」
「すべては、エリノア様を
心配されてのことですよ。
お嬢様が、レディの姿ではなく、
使用人の制服を着ていたら、
ご自分の身は、すべてご自分で守らねばなりませんから」
「でも……」
「お嬢様、まだお分かりになりませんか?
こんな夜遅くに、
男を部屋に招き入れるなんてこと、もうおやめください」
「ルーカス?」
「あなたが、レディでなければ、
トーマス様がメイドにしていたことを、
今、あなたにしても、罪にはならないってことが分かりますか?
上級使用人や地位の高い男性が、
一時的な恋の戯れの相手として、
メイドを見ているのをご存知ですか?」