円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「ルーカス、でも……
私は、そんなに、人に好かれるたちではないわ」
彼は、優しく笑って答える。
「エリノア様?そういう告白は、旦那様にしてあげてください。
旦那様が、夜中に眠れずにいるのは、エリノア様のせいですから」
「ウィリアムが?私のせいで眠れないの?どうして?」
「お嬢様は、ずいぶん残酷でした。ウィリアム様の目の前で、あんなに仲良さそうに踊って」
「あら、ダンスは、それほど楽しかったわけでもなかったわ。
でも、トーマスさんのアメリカの話は、とても楽しかったの。
話を聞いているとワクワクしたわ」
「エリノア様は、あのアメリカ人ではなく、ずっと、お話に夢中だったんですね!」
「ええ、そうよ。トーマスさんの話も面白かったけど……」
「途中で考え事しちゃうの」
「何をお考えになるのですか?」
「ねえ、どうしてウィリアムったら、あんなことしたのかしら?
あれからよ。落ち着かなかったのは。
ウィリアムが、いきなりキスしてきた時だわ。
いったいどういうつもりなのか、まったく分からないの」
「そればっかりは、直接お尋ねください。旦那様を困らせてやってください」
「ありがとう、ルーカス。今日はぐっすり眠れるわ」
「それは、よろしゅうございました」