円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

伯爵家は代々、
文化的なものを大切にする。


プルームズベリーの歴史だって
ここで知ることが出来る。
ここの蔵書の中にちゃんと町の歴史が保存されている。

伯爵家が独自に調査し、
記録に残してきたからだ。

そういった、今では
お金に換えられない価値のあるものが
たくさん、ここには詰まっている。

エリノアは、
きれいに分類された蔵書を隅々まで見たいと思った。



しばらく本の背表紙に
見入っていると、声をかけられた。


「珍しいのね?女性だというのに、
そんなに本がお好きなの?」

エリノアは、声をかけて来たのが
誰だかわかると、さっと体制を整えて、
深く腰を落として跪いて挨拶した。


「おはようございます。キャサリンお嬢様」

落ち着いた声に、
きりっとしたものの言い方、
それに負けないピンと伸びた背筋。


レイランド伯爵の長女、
キャサリン・レイランド嬢だった。

キャサリン嬢がすっと
手を伸ばして来て、エリノアが持っていた本を手にした。


「農業関連の本?
あなた、そんなものに興味があるの?」
キャサリンが。
興味を持ってエリノアの顔をのぞき込む。

質素な服装に、ひっつめた髪の毛。

凄く美人という訳ではないけれど、
どこか彼女の前だと背筋が伸びてしまう。

「はい。連作障害について
記述したものがあればと」

本を返してもらい、
エリノアは、あらためてお礼を言う。

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