円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「連作障害ですって?」
キャサリンが大きな声で笑った。
エリノアは急に笑われて、
どうしていいのか分からなくなった。
何かおかしなこと言ったのかな?
今取り交わした会話を
思い返してみたけれど、どこが悪かったのか分からない。
「申しわけありません、
キャサリン様。何か失礼なことを申し上げたようで」
キャサリンは驚いてエリノアを見た。
「どうして謝るの?
私は自分のことを言われて
いるようでうれしかったわ。
侯爵夫人が言っていたわ。
姪が本ばっかり読んで、
社交界に全然興味を持たないって。
だから、私のようになっては
困るっておっしゃってたわ」
今度は、エリノアが驚く番だった。
「とんでもありません。
もし、私がキャサリン様の
ようになれたら、
社交界なんて一生近づかなくたって平気です。
キャサリン様のように、研究で成果を上げるなんて。
私には夢のまた夢ですから」
キャサリンがゆっくり微笑む。
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。
でも、とてもそんなに、
高尚な意思があるわけじゃないのよ。
ただ、好きなことをしてきただけ。
いいわ。エリノアさん、ここの本は好きなだけ読むといいわ。
じっくり読みたいものがあれば、家に持って行っても構わないわ」
「本当ですか!ありがとうございます」
エリノアは、深々と頭を下げた。
「いいえ、お安い御用よ」