円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
狩りに出たら、ここで食事をしたり天候の回復を待ったり、休憩したりするのだ。


ウィリアムは、先に家の中に入り、家の様子を見て回った。

特に異常がないと思われると、エリノアのそばまで来た。

「どうぞ、お嬢様お入りください」

わざわざ、深く頭を下げて言う。

ウィリアムは、軽く抱きしめるようにエリノアの肩を抱くと、耳元にキスをした。


何かが違う。

エリノアに、彼はそう思わせたかったのだろうか?

ドギマギして、戸惑う彼女の様子を満足そうに見て彼が言う。

「今、暖炉の火を起こすから、そこに座って」

「そこ?」

「ちゃんと、絨毯が敷いてあるだろう?」

敷物は、大木な動物の毛皮だった。


エリノアは、ウィリアムに言われたとおりに敷物の上に座る。

彼は、暖炉の前の椅子に座って、器用に暖炉の火を起こす。

「さすがに、上手なものね」

「暖炉に火を起こすのがかい?」

「ええ。そうよ。私、階下に行ってみて、自分が何もできないってことが
よく分かったわ」

「そうか。それは、いい体験だったな」

「ええ」

< 178 / 195 >

この作品をシェア

pagetop