円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「えっと、あの……」

彼は、すでに、エリノアが承諾した
みたいに、暖炉の火を弱め火を消しに
かかっている。

「さあ、おいで」

片方の腕は、エリノアをしっかり抱き
とめていた。


彼の言っている意味は、
どういう意味だろう?


さっき彼が言っていたじゃないの。

しかるべき措置を取れば、相手の女性に
何をしてもいいって。


身分の高い男性は、女性をつまみ食いしても、ごめんなさいって謝れば許される。

そういう意味なのだろうか?



エリノアだって、一応レディの範疇に入るけれど。


ウィリアムは、侯爵家の跡取りだ。

ウィリアムは従兄だけど、彼の家の方が
数倍……

いや、それ以上に資産の規模も、
社会的な重要度も大きい。

身分の高い侯爵様からすると、
エリノアのような地主の娘は、
結婚相手というより、火遊びの相手に
選んだという方が相応しい。

戯れの相手だと言ってしまえば、
それで誰もウィリアムを責めることは
できない。

ウィリアムが、トーマスに意見を
言ったように。

彼からすれば、エリノアと恋人のような
一夜を過ごして、もう用はないからと
お金を渡せばそれで済む。

世間一般では、誘いに乗った娘の方が
バカだったのだ。

一度、傷物になった娘は、後ろ指を
さされながら、生涯独身で、寂しく
ひっそりと生きていくしかない。


そうなると、身分相応の紳士に
見初められて結婚するという、
エリノアのような女性が一番望ましいと
思われる道が、彼女の前でピッタリと
閉ざされてしまう。


ウィリアムがどういうつもりでいるのか、確かめなければならない。

そうしなければ、自分は、ミーガンの
ように男性の思うままに求められて、
気持ちが冷めたらそのまま捨てられる
のかもしれない。



エリノアは、ウィリアムから離れ、
出来ませんと首を振った。
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