円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
彼は、エリノアの方を向くと、
優しく言った。
「どうやら、僕たちが留守の間に、
君とトーマスが駆け落ちしたっていう
噂が流れてるらしいよ」
彼は、困ったというよりは、面白いことが起こった時のように嬉しそうに言った。
エリノアの方は、自分の取った行動が、
そんな風に噂になっているなんて
思いもよらないことに戸惑った。
「ウィリアム……」
「心配には及ばないよ。この後すぐに、
僕たちのお披露目をするからね」
エリノアが何か言う前に、
ウィリアムが口を挟んだ。
彼は、エリノアが不安にならないように、肩を抱くようにして言う。
「ウィリアム?お披露目って、
みんなの前で発表するっていうこと?」
エリノアが不安げに尋ねる。
「そうだね。そいうのもいいね。
みんなに発表したほいうがいいかな。
全員集まってる方が、一人ひとり訪問する手間が省けるね」
いつもそうだけど、この人は一旦、
腹を決めると行動が早い。
「ウィリアム本気なの?ちゃんと考えたの?
お願い、一時的な感情で決めないで。
よく考えたほうが……」
三日前には、彼がプロポーズしてくる
なんて、想像もできなかった。
「エリノアよく考えて、僕の気が変わる
ようなことなったらどうするの?」
「それは、イヤです……けど」
エリノアは首を横に振った。
「ん、では、エリノア、いいね?
やっぱり伯爵家に戻ってみんなの前で
発表しよう」
「ウィリアム、
あの、そんなに急に言われても……」
「ダメだよ。エリノア、君の名誉を
守るためにも、すぐに発表する
支度をさせなきゃ。
噂はどんどん広がるからね」
エリノアは侯爵家で、一から着替えを
させられ、美しく飾り付けられた。