円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
これだけの大きな屋敷を維持するには、
多くの使用人を、使いこなさなければ
ならない。
屋敷の古臭い雰囲気と巨大なスカート
と共に、エリノアは不安に襲われる。
重圧に押しつぶされるより、メイド服を
着てる方がどんなに幸せか。
エリノアがホールに下りようとして、
階段に差し掛かると、後ろから
声をかけられた。
「エリノア?支度が出来た?」
彼女は、深々とお辞儀をした。
「ええ、ブラッドリー卿。
お待たせしました」
充分すぎるほど、礼を尽くして
腰を低くした。
本当に、これで大丈夫かしら。
どれだけ頭を下げればいいのか、
さっぱり分からない。
挨拶からして混乱してしまう。
彼女は、少し戸惑いながらウィリアムに
挨拶をした。
「エリノア、そんなに固くならなくて
いいよ。それより、君は、
何てきれいなんだ」
ウィリアムは、彼女に近づきすぎて
スカートの裾を踏みそうになった。
「ウィリアム、それは言い過ぎよ。
張りぼてで囲ってるだけよ」
「そんなことない。キスしたい。
こんな美しい人を誰にも見せたくない」
「ええっ?」
ウィリアムは、身動きの取れない
彼女をさっと捕まえてキスをした。
「なかなかいいね、エリノア、
こういう格好も」