円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「ウィリアム、
こんなところで何をしているの?」
階段の下の方から、声がした。
立派な階段のある広いホールから、
侯爵夫人が見上げている。
「まったく、あなたって、どうしてこう、性急にことを進めるのかしら」
侯爵夫人は、上を見ながら苦しそうに
言う。
「母さん、夫婦は仲がいい方が
よかったんでしょう?」
息子の方は、気持ちよく答える。
「ええ、そうね。そういうなら、
早く孫の顔でも見せて欲しいわ」
「もちろん、そのつもりでいますよ」
ウィリアムは、笑って答える。
侯爵夫人は、真剣にエリノアを見つめて言った。
「この家に嫁いでくるのは大変だけれど、覚悟はできているの?」
「はい。叔母様」
ああ、侯爵夫人の目を見れば、分かる。
多分、エリノアをしっかり鍛えるつもりだ。
かわいそうに、彼女は、たくさん
しごかれそうだ。
「いいわ。だったら私から、
何も言うことはないわ。
思うようにしなさい」
「ありがとうございます。母さん」
侯爵夫人からお許しが出ると、
二人は馬車に乗り込んだ。
広大な屋敷の敷地を通り抜け、
伯爵家に向かった。