円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
今年も、舞踏会のシーズンが始まる。
クリスマスの少し前から、翌年の3月までの期間が、ここプルームズベリーにおける社交シーズンである。
社交シーズンの期間中は、国のいろんな場所で舞踏会が開かれることになっている。
普段の業務に加えて、社交界の花である舞踏会の準備も始まるから、雇い主も、使用人も、この時期には目の回るような忙しさになる。
数ある舞踏会の中でも、名門貴族レイランド伯爵家で開かれる舞踏会は別格だ。
国中から招待された紳士や淑女が、入れ替わり立ち代わり、国中の要人が一同に集う、最も華やかな会として知られている。
毎年、舞踏会を楽しみにしている人にとっては、伯爵家で開かれる舞踏会は特別なのだ。
地主の令嬢、メアリーも舞踏会を楽しみにしているうちの一人だ。
メアリーも、舞踏会の準備に余念がなかった。
造花やリボン、レースに花飾りに、チュール。
ふわっとした羽などが、ふんだんに使用された髪飾りに、大きく広がったスカートを持つ美しいドレス。
メアリーは、手にした品物を一つ一つ丁寧に広げてみる。
どのドレスに、何をあわせよう。
彼女は、たった今届けられたドレスの箱を開け、出来上がったドレスを並べるだけで幸せな気分になった。